プロダクトアウトは時代遅れか?マーケットインへの転換が必要?
マーケティング用語としてよく聞かれる「プロダクトアウト」と「マーケットイン」。最近は、カスタマーインとか、ユーザーインとか、逆にマーケットアウトとか、いろいろな言葉が使われます。
そもそも、プロダクトアウトとは「企業側が作りたいもの、作れるものを作り、それをどう販売していくか」と考える発想です。市場のニーズには見向きもしません(は言い過ぎか笑)。このプロダクトアウトは、もうとっくに時代遅れと言われます。
一方、プロダクトアウトの反対、逆にあると言われるのが「マーケットイン」です。マーケットインとは、「市場ニーズをとらえて、それを基礎にして製品開発を行い、販売していく」手法を指しています。
そのため、多くの書籍やウェブなどでは「プロダクトアウトvsマーケットイン」で論旨が展開されます。そして、多くの場合、マーケットインが良で、プロダクトアウトが悪になるケースが多いようです。しかし、検索エンジンで「プロダクトアウト+マーケットイン」で探すと、この2つはどちらが良いもので、どちらが悪いものという論調自体が既に古いのだということがわかります。
■■■ 大問題なのは、顧客不在のプロダクトアウト
プロダクトアウトというやり方自体が悪いわけではなく、「顧客不在」のプロダクトアウトがうまくいかないと私は思います。自社の既存顧客が潜在ニーズとして持っているものに合わせたプロダクトアウトなら、きっと売れると思います。顧客のことを全く考えずにプロダクトアウトしたなら、それは売れないでしょう。
しかし実際には、顧客のことを全く考えないプロダクトアウトというのはほとんど存在しないのではないでしょうか。そう考えると、顧客を意識してプロダクトアウトしたとしてもうまくいかないケースもあると理解しておくのが当然でしょうね。
■■■ マーケットインも万能じゃない
マーケットインの場合は市場調査したり、顧客へのインタビューなどを通じてニーズを見つけます。ほとんどの場合は、顕在化したニーズです。顧客自体がそんなニーズを自分が持っているなんて考えもしなかったというようなニーズが見つかることはまれでしょう。
顕在化しているニーズに対して製品を開発して販売するので、場合によってはニーズが消え去ってから製品が完成することになったりするかもしれないし、製品を開発している間に競合他社がニーズをすっかり持って行ってしまっていることもあるかもしれません。
そう考えると、マーケットインも万能とはいいがたいですね。
■■■ 大体、ここでアップルなどの話
こうして話してくると、大体出てくるのがアップルとかの話です笑。iPhoneが発売される前に、誰があの「スマートフォン」と呼ばれるものを顕在的に欲しいと言っていたでしょうか。言っていたとしてもほんの少数の方でしょうね。つまり、アップルはプロダクトアウト的だというのです。
後で出てきたフォロワーのAndroidはニーズが顕在化した後ですから、マーケットイン的なのかもしれません。どうでしょうか。一概にどちらが正解とも言えなそうです。
■■■ 中小企業の場合は、いわゆる大企業がやるマーケットインは難しい
B2Cの市場の中でマーケットインをやろうとすると、ビックデータの解析が必要だったり、顕在化ニーズを把握するための調査が必要だったりすることがあるでしょう。お金がかかります。中小企業の場合はこれができないケースもあるでしょう。
マーケティング用語で、「ペルソナ」というのを聞いたことがある人がいると思います。「40歳の東京港区にマンションを持っているセレブな女性で、化粧品会社を経営している。未婚で子どもはおらず、家事もほとんどしない。仕事以外での活動としては、毎週末にどこかしらのボランティア活動に参加していて、全くセレブ感を出していない。名前は白鳥涼子」などという設定をします。
この人が望む製品は何かと考えて製品を作ろう、という考え方ですね。無理がないですか?
■■■ 中小零細企業は自分が欲しいものを作ればいい
ペルソナの設定は、想像力豊かで、いろいろな生活スタイルや市場などを知っているコンサルタントの助けをもらってやるものではないかと想像します。しかし、そういうコンサルタントは高い。って私が言ってしまってはおしまいだけど笑。
なので、中小零細企業はその会社の「社長」とか、「社員のだれだれ」とか、そういった実在の人物を設定して、その人のニーズを満たすようにすればいい。なんなら、開発者自身でいい。自分が欲しいものを作るのです。
人間はみんな唯一無二の存在ですが、類似したニーズや生活スタイルを持っている人は少なからずいます。そういう人たちに届くように販売展開をする前提で、その人たちが欲しそうな、つまりは自分が欲しいものを作ればいいんです。
■■■ 結果、プロダクトアウトだろうが、マーケットインだろうがどっちでもいい
あまり、戦略的な言葉に追い回されず、中小零細企業は自分が好きなものを作ればいい。知らない誰かが買ってくれるだろうではなく、自分だったらその製品を買うのか?という視点で考えればいい。それがペルソナマーケティング的になるし、プロダクトアウトかつ、マーケットインになるものです。
もし、そうして作った商品が売れなかったとしたら、概ね理由は二つ。その商品の存在を十分に知られていないか、もうひとつはそもそもそのニーズを持っていたのは自分だけだったかです。
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