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2005/05/17

日経コンピュータ2005.5.16号を読んで

日経コンピュータ2005.5.16号の「動かないコンピュータ」を読んで、「こりゃまた要求の行き違いか」と思ったので、3つ挙げて少しだけ感想を書いてみます。

詳しくは記事を読んでいただくのがよいのですが、ここでは一部分だけ引用させてもらい、それらについてコメントを加えます。(固有名詞ははずし、発注側、受注側としています)

まずはじめの提案依頼のところからボタンは掛け違っています。発注者側は

同社固有の可能性が高い78項目の要件を挙げ、標準機能で実現できるかを聞いた

とのこと。これに対して、受注者側の回答は、
システムへの(パッケージソフトの:佐川追記)適合率は単純計算で92.3%である。

というもの。
単純に、まずそんなはず無いでしょうというのが印象。実際、発注側も裁判では「不安だった」と陳述書に書いているそう。この提案依頼の段階で、
  • 固有項目のみを提示
  • それらの固有項目は固有であるがゆえの特殊性をきちんと説明できていたのか
  • 適合率の回答を精査していたのか
という疑問がわきあがりました。

固有項目というのは、その企業が業界と差別化を図るためのものか、逆に業界から取り残されていることを証明しているものかのどちらかである可能性が高いわけです。恐らく、この事例の固有項目は「旧法人の人事制度を引き継いでいるため」という記述から後者であった可能性が高いと思われます。そこで、発注側は「それは所与の条件であり、システム導入によって変えられないもの」という判断、受注側は「時代遅れでBPRを実現しなければならないもの」という逆の認識に立ったのではないでしょうか。

二つ目に気になるのは、

契約前に発注者の示した資料が不十分だった上、話し合ううちに仕様が膨らんだ

という受注側の主張。これは現在の状況では世の常で、それをきちんと抑えるスキルとノウハウが無かったのは受注側の落ち度の可能性が高いです。ましてや、はじめから92.3%の適合率を出してしまっていたこともこういった状況に陥った原因になっているとも考えられます。一方で、そういう高い適合率を出させたのは、発注側の提案依頼の要求内容が曖昧だったという可能性も否定できません。

三つ目に、

受注側は給与システムの稼動に最低限必要だと判断した111項目の機能を示した

とあり、また
依然として実現できていない機能が43項目残っていると判断した

とも。この内容では、
  • まず111項目の機能と提案依頼時の要求項目との合致性はどうなのかという点
  • 残った43項目のうち、発注者固有の機能はどの程度あるのか
  • 受注側が示した適合率内にあたる部分なのか
という点については、よくわかりません。
しかし予想するに、111項目の中には固有項目だけではなく標準的な項目も含まれていただろうと考えられますし、43項目にはパッケージの標準機能が含まれていたことでしょう。

なぜ、こんなことが起こるのでしょうか。いつも主張しているのですが、「要求をきちんと定義しましょう」。

  • 適合率92.3%を聞いて定義を適当にして走ったのではないですか
  • 不足機能をバージョンアップに求めるなどの無理さ加減を甘く見ませんでしたか
  • 当初に111項目の機能は合意しておけばよかったのではありませんか
などなど、後の祭りといわれればそれまでですが、手は打てたのではないでしょうか。

最後に、

貴社の業務遂行上の機能は、日々の導入作業の中で、すでにご提供済み

という受注側企業からのCEO文書は行き過ぎかなとも思いました。「業務遂行上の機能が提供されたかどうか」は発注側が判断すべき内容(または受注側と合意する内容)であって、受注側が「ご提供済み」という風に言うものではないかなと。
(ましてや、“提供させていただいた”と書くならまだしも、“ご提供済み”とは、敬語の使い方も間違っているぞ(爆))

久しぶりに長々書いてしまった。

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